【開催御礼-座談会の記録】トランスマンツァ・ツアー上映会&トーク
イタリアのドキュメンタリー映画「トランスマンツァ・ツアー」汐見の家上映会は、2018年7月の西日本豪雨による11日間の断水が明けて1週間後に開催されました。
しまなみエリアは元々災害が少ない地域で、佐島の高齢者の方々も「こんな事は初めて」と口々に語っていました。でも、驚いたことに、昔ながらの井戸が多く残っている佐島はとても落ち着いていたのです。
上島町全体としては上水だけの家が多く、酷暑の中で厳しい生活を強いられましたが、井戸が残っている家では「お水も沸かして飲めばよいから」と、ほぼ通常運転。
飲用水の配給を受ける場合も、高齢者の一人暮らしの方には近所の方が「〇さんと□さんと△さんの分は持って行くわ」と自然に助け合っていました。
昔のくらしの知恵やコミュニティのあり方を問い直す「トランスマンツァ・ツアー」上映会がこの時期に重なったのは偶然とは思われないくらいです。そこで、上映会の後で座談会を開催し、記録をここに残させて頂きます。
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映画の感想と、断水の振り返りを一言ずつお願いしました。要旨を纏めています。
Fさん(30代男性/生口島在住:高校教諭。学校教育で地域の事を習わない。井戸のような先人の知恵をどう引き継いで行くかが課題だ。今の教育は良い大学に行く、つまりは都市に人を流す教育をしているが、地域に留めたい。
Nさん(20代女性/汐見の家に滞在中:以前はトマト農家の手伝いをしていたが、経営者は収益や売上ばかり気にしていた。WWOOFのホストは身の丈に合った暮らしを目指していて、より豊かに思えた。人と自然との共存、どう生活して行くか、色々考えさせられた。
Eさん(30代男性/上島町在住:WWOOFは初めて知った。佐島も旅行者など外からの支援を上手に受け止めることが重要になると感じた。今回の災害では受け入れの準備不足が反省点。ボランティアに効率よく仕事を振れず悔しかったが、それぞれ自主的に地域の中でやることを見つけて動いてくれた。日常の生活の中での助け合いの仕組み作りが大事。
Aさん(20代女性/1年前に佐島移住:佐島に来て学んだのは実際に体験して身に付く技術。丸スコップと角スコップの用途の違い、竹の使い方等々、言葉で説明するのは難しい。断水は大変だったが、今まで話す機会が無かった人と話せて良かった。
Yさん(20代女性/1年前に佐島移住:映画のセリフ「パソコンに1日8時間も向っているのは苦痛」とまではいかないが、東京では似た状況だった。こちらではどんどん自分の野生度がアップし、風が気持ちいいとか、ごはんが美味しいといった生物的な幸福度が上がったのを実感している。断水は大変ではあったが、自宅や準備中のカフェの井戸を開放し、今まで接点の無かった人と「断水」という共通の話題が出来、復旧後も挨拶を交わせるようになり、良い機会になった。
Tさん(10代女性/上島町在住:映画はつまらなかった。断水も特に困ることはなかった。
Tさん(40代男性/上島町在住:一般的にドキュメンタリー映画はエンターテイメント映画と違い面白いという感覚ではないが、今日の映画はテンポのいい音楽に乗ってストーリーが展開され、とても鑑賞しやすかった。WWOOFの活動紹介的な映画だった。
Aさん(20代男性/2年前に佐島移住:農場の人達の考えと共感する所があり楽しめた。ただ、自分らしい生き方という言葉が農村回帰、地方創生の文脈でばかり取り上げられるのには違和感がある。マンションの1Fにコンビニがないと生きられないと言うのも自分らしい生き方だ。断水は、井戸が使えたため島内に生命の危機を感じた人は居なかったと思う。非日常的な経験を皆で共有し、復旧を喜び合えたのは良かった。
Kさん(30代女性/2年前に佐島移住。ワーキングホリデーでファームステイやピッキングをしたので映画を見て懐かしかった。みんなで汗を流すのが良い。断水は子供には良い経験だった。協力し合って何かが出来ることを教えられた。いつか子供と一緒に海外を回る夢が出来た。
Mさん(40代男性/8年前に弓削島移住:欧米では学校卒業後、世界旅行をする人が多いが、日本は大学卒業後すぐ就職する。就職前に半年や1年間、自分探しをすることが一般的になれば良い。断水の感想は皆さんと似ているが、終わった時に一抹の淋しさを感じた。皆で助け合い、近所とのコミュニケーションが一気に増えて心地よく、誤解を恐れずに言えば楽しさがあった。井戸が集中し、その水脈を「〇〇川」と呼ぶ地域があり、先人の知恵に学ぶべきと思う。
Iさん(70代男性/因島在住:潮湯でチラシを見て来た。断水は、子供の頃を思い出し懐かしかった。妻が近隣の高齢者の通院や給水を手伝い、やりがいを感じていた。また、遠くに住む子供達が連絡をくれたり物資を送って来て、親のことを心配してくれる事がわかり高揚した。
Mさん(30代男性/生口島在住:就農準備中。断水期間中、隣の老夫婦は慌てる風がなく、モノが無い時代に生きた人は動じないと思った。年末に子供が生まれるが、モノの有難みがわかる子供に育てたい。映画を見て色々考えることが出来た。自分なりの考え方を子供に伝えるが、大人になってからは自分の考え方でどうぞと言いたい。
Sさん(30代女性/向島在住:家族3人で参加した。子供がぐずったので映画を見られなかったが、外で監督と話せて伝わって来るものがあった。家族で色々なことを経験したいので、今回のようなイベントは貴重な機会。島が色々なコミュニティで繋がり、栄えたら良い。
Yさん(30代男性/因島在住:映画はイタリアの自然の映像が綺麗で、音楽も心地よかった。複数回ミラノに滞在経験があるが、イタリア人は明るく、仕事を楽しみ、しっかり休む。トスカーナ地方に1週間滞在したが、トラットリアやバルで地産地消の活動が普及している。映画を見て、また海外に行った時の新しい視点が出来た。断水は、妻と2人暮らしなのでそれほど困らなかったが、スーパーやコンビニから物が無くなり驚いた。水の大切さが判る機会になった。
Sさん(20代女性/松山市在住:自給自足はむしろ最先端だと思う。SDGs(*)に興味がある。今は大学の夏休みを利用して農園で実習をしているが、今後は海外に出て多くの物事を見て色々な人に会い、ふるさとの上島町に戻り地域活性に貢献したい。
*SDGs: Sustainable Development Goals 国際連合の2030年までの目標。17項目の目標を掲げる。
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記憶が生々しく、冷静に振り返る期間もあったタイミングで、貴重なご意見を頂きました。
キーワードはコミュニティと井戸・電気だと感じ、足りていない電気について模索を始めました。北海道のブラックアウトで蓄電や分散化が注目されていますが、いつ来てもおかしくないその日に備えて、いま出来る事を進めたいと思います。